屋根工事専門のヤネピカです。
2026年4月14日、RIZAPグループ株式会社が「RIZAP建設株式会社」を通じた建設事業の外販開始を正式に発表しました。
フィットネス事業者による建設参入という一見意外なニュースですが、その内容は、建設業界全体に向けた構造的な問題提起が含まれていることがわかります。屋根工事・リフォーム業界とも、決して無関係ではありません。
本記事では、RIZAPグループ公式プレスリリース(2026年4月14日付)をもとに、この参入の背景と業界への影響を整理してお伝えします。
チョコザップ1,020店舗の出店実績が、すべての起点

まず押さえておきたいのが
RIZAPグループは2023年1月24日から2024年1月23日までの1年間で、24時間営業のフィットネスジム「チョコザップ」を1,020店舗出店し、「1年間で最も多くオープンした24時間営業のフィットネスジム・センター」としてギネス世界記録に認定されています(RIZAPグループ公式プレスリリースより。以下、出典は同じ)。2026年3月31日時点の全国店舗数は1,909店舗にのぼります。
この驚異的なスピードを支えたのは、外部の施工会社に依頼する従来のやり方ではありませんでした。同社はこの出店過程で「物価高騰」「人材不足」「多重下請構造」という建設業界の3つの課題に直面し、それを自力で乗り越えるために独自の店舗開発・施工の内製化を確立しました。RIZAP建設は、ビジネス多角化として生まれた組織ではなく、大量出店という実戦の中から生み出された組織といえます。
「3つの直」が生み出す、コストとスピードの仕組み

RIZAP建設のビジネスモデルの核心は、プレスリリースで「ネットワーク型SPAモデル」と表現されています。具体的には、以下の3つの原則を徹底しています。
製造工場との直接取引によって中間コストを排除すること(直取引)、職人を社内で直接雇用・養成することで現場の機動力を確保すること(直雇用)、そして従来の多重下請構造を介さず各工程へ直接発注すること(直発注)です。
この3つの組み合わせにより、RIZAP建設は「通常費用から25〜30%削減、通常工期の2倍速、かつ適正品質」という数値目標を掲げています(チョコザップ出店における内装・資材・什器の過去比較より)。
外販のきっかけは、ある事業会社から出店支援の相談を受けたことだったといいます。2店舗のコンペ施工でQCD(品質・価格・早さ)が評価されて正式落札となり、2025年10月から2026年3月の半年間で186件の施工を完了しています。
建設業界の「2040年問題」という社会的背景

今回の参入には、業界構造への明確な問題意識が込められています。
経済産業省の推計によれば、建設業界では2040年に約122万人の人材不足が見込まれています(2026年3月5日、第30回産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会「参考資料2 2040年の就業構造推計(改訂版)について」P3)。
RIZAPはこの課題に対し、グループ全体でのAI活用推進によって業務効率を20%以上向上させ(2025年10月時点と2026年3月時点の比較)、生み出した余剰リソース最大500人をRIZAP建設へシフトして職人として育成する計画を発表しています。あわせて社外からのキャリアチェンジ希望者も受け入れ、建設人材を永続的に輩出するプラットフォームを目指すとしています。
この取り組みに込められたメッセージとして、「誰も直せない日本の未来を、私たちが変える。」という言葉がプレスリリースに記されています。
屋根・外壁リフォームとの直接競合は無し。ただし——
RIZAP建設が対象とする工事は、店舗・オフィス・美容室・医療クリニックなどの内装工事です。屋根工事・外壁工事・住宅リフォームとは、現時点で直接競合する関係にはありません。この点はまず、正確に確認しておきたいところです。
ただし、この参入が屋根・外壁業界にまったく無関係かというと、そうとも言い切れない側面があります。
RIZAPが今回提示したのは、「建設業界の多重下請け構造は、コストと工期の非効率を生んでいる」という問題提起です。この指摘は内装工事に限らず、屋根工事・外壁工事を含む建設全般にあてはまるものです。施主(発注者)の側にこうした認識が広がっていけば、「中間マージンが乗っているのではないか」「直接発注できる業者を探したい」という意識が高まっていく可能性があります。
地域に根ざした専門業者に求められる「伝える力」

コスト削減・工期短縮・スケールメリット。RIZAPが提示する価値は、規模の経済に裏付けられたものです。しかし屋根工事・外壁工事には、スケールでは代替しにくい要素があります。
屋根は住宅の中でも最も気候の影響を受ける部位であり、施工精度のわずかな差が数年後の雨漏りや耐久性に直結します。地域の気候・建物の構造・既存材との相性を踏まえた判断は、現場経験の積み重ねによって培われるものです。また施工後のアフターフォロー・保証対応・緊急時の迅速な対応など、地域に密着した業者だからこそ提供できるサービスもあります。
課題があるとすれば、こうした強みが「当たり前のこととして言葉にされていない」場合が多いという点です。お施主様の立場からすると、見えない品質の差は比較できません。「安い・早い」が数字で示される一方、「丁寧・安心・長持ち」が言語化されていなければ、選択の判断材料にはなりにくいのが現実です。
RIZAPの参入は、業界全体に対して「自社の価値をきちんと言葉にする機会」を提示しているとも読み取れます。
まとめ

RIZAPグループの建設業参入は、業界の多重下請け構造・コスト高・人材不足という課題への問題提起を内包した動きです。これらの課題は、屋根・外壁工事を含む建設全般に共通するものでもあります。
直接の競合関係はないとしても、施主の意識変化という形での間接的な影響は、中長期的に視野に入れておく必要があります。価格の透明性・施工品質の可視化・アフターサービスの充実——これらを丁寧に言語化して発信し続けることが、地域に根ざした専門業者としての信頼を守ることにつながります。
建設業界の「常識」が問い直されるときこそ、長年にわたって地域で積み重ねてきた技術と誠実な対応が、お施主様に選ばれる本当の理由になると、私たちは考えています。
