1.はじめに|本記事の位置づけと使い方
本ガイドは、ヤネピカが東京・埼玉・千葉・神奈川にお住まいの方に向けて、雨樋の修理・交換にまつわる疑問にお答えするためにまとめた完全保存版です。
この記事の要点
雨樋(あまどい)は、屋根に降った雨水を集めて排水路へ導く住宅の重要な部材です。
劣化を放置すると、外壁の汚損、基礎の沈下、雨漏り、近隣トラブルへとつながる可能性があります。
材質にもよりますが雨樋部分修理であれば数千円〜3万円台、雨樋全交換では30〜60万円が一般的な費用感です。
素材は塩化ビニル樹脂、合成樹脂耐候性向上型、ガルバリウム鋼板、銅、ステンレス、アルミの6種類が主流で、住む地域の気象条件と築年数で最適解が変わります。
火災保険の風災補償により、台風・突風・大雪・雹による損傷であれば、被災から3年以内であれば修理費用が補償される可能性があります。
業者選びは、建設業許可・建築板金技能士の有無、火災保険申請のサポート体制、地域での施工実績、相見積もり時の説明の透明性で判断するのが望ましいとされています。
2.雨樋の基礎知識|名称・役割・構造

2-1. 雨樋とは何をする部材か
雨樋は、屋根に降った雨水を受け、住宅の基礎まわりや外壁から離れた場所に排水するために設置される建築部材です。
一見地味な存在ですが、住宅の寿命を左右する重要な役割を担っています。
雨樋がない住宅では、屋根から落下した雨水が外壁を伝い、基礎まわりの土を抉り取り、地下浸水や床下湿気の原因になります。

2-2. 雨樋の主要部位と名称

2-3. 軒樋の形状3種類
軒樋には主に「半丸型」「角型」「特殊型(リバーシブル等)」の3形状があります。
近年は半丸型から角型へのシフトが進んでいます。
理由は、同じ幅であれば角型のほうが排水量が大きく、ゲリラ豪雨や線状降水帯への耐性が高いためとされています。
2-4. 法的位置づけ
雨樋に関連する建築法令・基準として、以下が押さえどころです。
•建築基準法施行令第86条
積雪荷重の単位荷重を定めており、一般地域では1cm当たり20N/平米以上、多雪区域では30N/平米以上が基準とされています。
•民法第233条
隣地に雨水を直接流入させることを禁じており、雨樋の設計・施工はこの趣旨にも沿う必要があるとされています。
•JIS A 5706:2016:硬質塩化ビニル雨どいの日本工業規格で、13項目の試験(促進耐候性試験500時間など)に合格した製品が市場に流通しています。
•国土交通省 建築設計基準:降雨強度
160mm/hに対応する設計が標準とされ、ルーフドレンは2箇所以上の設置が求められています。
3.雨樋を放置するとどうなるのか

雨樋の不具合を放置した場合に発生しうる問題は、以下のように多岐にわたります。
外壁の汚損と劣化

雨樋からあふれた雨水が外壁を伝うと、窯業系サイディングやモルタル外壁にカビ・コケ・藻が発生しやすくなります。
窯業系サイディングは吸水しやすいため、傷みが加速する傾向があるとされています。
基礎まわりの侵食と雨漏り
雨樋からオーバーフローした雨水が地面に落ち続けると、基礎まわりの土を流し、建物の沈下や床下浸水のリスクが高まる可能性があります。
特にデザイン的に軒樋が外から見えない内樋(うちどい)の場合は、屋根裏や壁の中で漏水が進行し、発見が遅れがちです。
近隣トラブル
軒樋からあふれた水が隣家の外壁を汚したり、駐車中の車両に飛び散ると、ご近所関係に影響が及ぶ可能性があります。
雨樋から落ちる水音が騒音問題になるケースもあります。
シロアリ被害の二次被害

雨水によって建物の木部が湿気を帯びると、シロアリが寄生しやすい環境となり、構造材の腐食につながる可能性があるとされています。
漏電・火災のリスク
建物内部に侵入した雨水の経路によっては、漏電や火災を引き起こす可能性があるとされています。
4.修理・交換が必要なサイン7選
ご自身でも目視確認できる、雨樋の劣化サインを以下にまとめました。

サイン①:雨樋の外れ・歪み

支持金具の劣化や強風で外れたり、雪や長年堆積した泥の重みで歪むことがあります。
雨水が屋根からそのまま落下している、軒樋が傾いている、地面に水たまりができているといった症状が見られたら要点検です。
サイン②:ひび割れ・破損

紫外線、寒暖差、衝撃、経年劣化により樹脂製樋にひび割れが発生します。
ひび割れが入った状態では雨水が漏水し、外壁の汚損につながります。
サイン③:落口の詰まり

落ち葉、土埃、鳥の巣などが軒樋・集水器・竪樋を塞ぎます。
庭や周辺、近所に公園・落葉樹がある住宅は特に注意が必要です。
サイン④:オーバーフロー(雨水のあふれ)

軒先から滝のように水が落ちてくる現象です。
詰まり、勾配不良、容量不足のいずれかが原因とされています。
サイン⑤:金具の錆び

金属製の支持金具や打込金具に錆びが発生していれば、雨樋の固定力が低下しているサインです。
沿岸部では特に進行が早い傾向にあります。
サイン⑥:色あせ・チョーキング

樹脂製雨樋の表面に白い粉(チョーキング)が出ていたり、色あせが目立つ場合は紫外線劣化が進んでいると考えられます。
塗装ではなく交換が望ましいケースが多いとされています。
サイン⑦:継手部の隙間

軒継手や竪継手から水が漏れている場合、接着剤の劣化やズレが発生しています。
部分補修で済むこともあれば、全体交換が必要なこともあります。
5.雨樋の費用相場|2026年最新版

5-1. 工事内容別の費用感
総合的ですが一般的な費用相場は以下のとおりです。

足場代は別途。
30坪の標準的な戸建住宅の足場費用は150,000円〜250,000円が一般的とされています。
5-2. メーター単価の目安

5-3. 屋根工事や壁の塗装と同時施工で割安になる理由
屋根工事や外壁塗装で足場を設置する際は、雨樋工事も同時に行うことで足場代を抑えられるため、費用効率が高くなります。
築15年〜25年で外壁・屋根メンテナンスを検討する場合、雨樋の点検もセットで実施し、劣化している様であれば交換や補修をするのが合理的とされています。
5-4. 「異常に安い」「異常に高い」のいずれにも注意
相場から大きく外れる見積もりには共通のリスクがあります。
極端に安い場合、人件費を削るための短期間施工、部材の質を落とす、金具や下地を交換しない、などのケースがあります。
極端に高い場合、火災保険を使う想定で水増しされた金額が提示されている可能性があります。
6.素材6種類とメーカー徹底比較

雨樋の主流素材は6種類です。
それぞれに長所と短所があり、お住まいの地域、屋根材、ご予算によって最適な選択が変わります。
6-1. 塩化ビニル樹脂(塩ビ)

最も普及している素材で、価格と施工性のバランスに優れます。
耐用年数は15〜20年とされています。
軽量で加工しやすく、住宅向けの色も豊富です。
一方で、紫外線による劣化、寒暖差による反りや割れが起こりやすい傾向があります。
6-2. 合成樹脂耐候性向上型(アイアン系・芯材入り)

パッと見ではわかりませんが塩化ビニル樹脂に金属芯(亜鉛処理スチール芯など)を組み合わせた複合素材です。
パナソニックの「アイアン」シリーズが代表例です。
鉄の芯材が入ってるので雹被害などに強い雨樋です。
耐用年数は20〜25年で、強度と耐候性が大きく向上しています。
6-3.ガルバリウム鋼板

55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板の雨樋で、近年新築・リフォーム双方で人気が高まっています。
洗練されたデザインが多く、耐用年数は20〜30年で、メンテナンス次第で50年以上保つこともあるとされています。
タニタハウジングウェアの「タニタガルバ」シリーズが代表例です。
6-4.銅

伝統的な日本建築で愛用されてきた素材で、耐用年数は20〜30年程度です。ただし酸性雨が多い地域では穴あきが発生する事例も報告されています。
現在は銅だけですと酸性雨に負け、穴あきが発生するので銅とステンレスの複合板を使用し、非常に耐久性に優れた商品も発売されています。
経年で青緑色(緑青)に変化する独特の風合いに変化するのが銅の魅力です。
6-5. ステンレス

耐食性に非常に優れ、耐用年数は30年以上とされます。
寺社建築や別荘、高耐久を求める住宅で使用されます。
タニタの「ビルステン」「レクステン」「SusCu(ステンレス×銅クラッド)」が代表例です。
6-6. アルミ

軽量で錆に強く、押し出し成形により直線美が特徴です。耐用年数は30年以上とされます。最近は建売住宅でも外国製の雨樋商品を多く目にします。
タニタハウジングの「ビルアルミ」シリーズが代表例で、大型建築でも採用が進んでいます。
6-7. 素材選定 早見表(1都3県別 推奨素材)

7.メーカー別人気商品比較

国内雨樋市場では、住宅用樹脂系を中心に4大メーカー(パナソニック、積水化学工業、タキロンシーアイ、デンカ)に、金属専業のタニタハウジングウェア、屋根一体型に強い元旦ビューティ工業を加えた6社が中心的な存在です。
7-1. パナソニック(住宅用樹脂系シェア最大手)
パナソニックは、住宅用雨樋において幅広いラインナップを展開しています。
公式積算資料に掲載されている主要シリーズは、メタリック調サーフェスケアFS-Ⅱ型・FS-Ⅰ型、グランスケアPGR60、KAKU RK85、ファインスケアNF-Ⅰ型、シビルスケアPC77・PC50、ジェイスケアPJ70、パラスケアU105、アイアン角N3.5Ⅱ、アイアン丸120・105、ハイ丸105・75、Archi-spec TOI AG120、いぶし雨といなどです。

PanasonicPC50の市場での地位
パナソニックのシビルスケアPC50は、1980年代後半から販売されているロングセラーの軒樋です。
2000年代には耐候性向上仕様へ改良され、現在でも多くの住宅で使用されています。
PC77はミルクホワイト・新茶・ブラックの3色。
PC50はミルクホワイト・パールグレー(しろ)・新茶・ブラック・モダンベージュ・オークブラウンの6色が用意されています。
標準長さは3,600mm(12尺)で、流通量が多いので入手しやすい軒樋です。
アイアン技術の優位性

出典 Panasonic公式サイト
Panasonicの「アイアン」シリーズは、高耐候性特殊樹脂、亜鉛処理スチール芯、硬質塩化ビニル樹脂の3層構造です。
単一樹脂より熱や衝撃に強く、施工事例では築30年経過した住宅でも歪みおよび割れがないとの報告があります。
7-2. 積水化学工業(エスロン・60年の歴史)

出典 エスロン公式サイト
エスロン雨樋のラインナップは7シリーズです。
具体的には、超芯LEVOL、ユニシェイプUST140、アートフェイスシリーズ、アーバントップΣ90、丸トップ、新・丸トップRV105、ライナートップX40・X70Uです。

ゲリラ豪雨対応の最新製品として、エスロン高排水システム雨といとエスロンオーバーフローソケットが展開されています。
サイフォン現象により効率よく雨水を排水し、降雨強度160mm/hr(107L/min)までオーバーフロー排水可能とされています。
7-3. タニタハウジングウェア(金属専業・高級ライン)

SusCu(サスク)技術の概要

出典 タニタハウジングウェア
SusCuは、0.3mm厚のステンレス鋼と約10倍厚い0.1mm厚の純銅を原子間で熱融着させたハイブリッド雨どいで、接合部が金属結合となるため剥離や変形に強い、業界初の新技術とされています。
7-4. タキロンシーアイ(サイホン技術の先駆)

出典 タキロンシーアイ公式サイト
主要シリーズは、ジェットラインJ135/T15(サイホン雨どいシステム)、ジェットラインJ170/T15(高排水)、シェイプリーラインTRU、半丸どいです。
ジェットラインの最大の特徴は、サイホン効果(ポンプ等の動力なしで細い管の中を液体が引っ張られるように移動する作用)を活用し、住宅の形状によっては従来8本必要だった竪樋を3本にまで減少できる点です。
7-5. デンカ(クリアール・レガリア)

出典 デンカアステック公式サイト
デンカは、前面表層に高耐候性樹脂を被覆して耐候性に優れる「レガリア」、排水能力が高くすっきりとしたデザインの「クリアール」が代表的な雨樋商品です。
クリアールシリーズは樹脂自体が高耐候仕様で、デザイン性に優れ、断面積設計に余裕があり大きな勾配を取らなくても排水できるとされています。
7-6. 元旦ビューティ工業(屋根一体型・特殊ポジション)

出典 元旦ビューティ工業
元旦ビューティ工業は、屋根材メーカーとして高い知名度を持ち、屋根一体型の「元旦内樋」が主力製品です。
屋根の内部に雨どいを組み込む構造になっており、一般的な外付け雨どい(半丸樋・角樋)とは構造も見た目も大きく異なります。
主な特徴は、雪に強く落ち葉が入らない設計で、150cmの積雪にも耐える強度(社内試験値)、落ち葉除けにより雨水は通すが落ち葉は通さない、強風にも従来より高い耐性を発揮する点です。
7-7. メーカー別 強み総括表

8.火災保険を活用した修理の進め方

8-1. 雨樋修理に火災保険が使える条件
火災保険の風災・雪災・雹災補償により、雨樋の修理費用が補償される可能性があります。
具体的に補償対象となるのは以下のような損害です。

8-2. 火災保険が適用される条件
火災保険を雨樋修理に使うために満たすべき条件は3つあります。
① 被災から3年以内に保険会社へ申請すること
② 経年劣化ではなく自然災害による被害であること
③ 加入している保険契約・特約条件を満たしていること
「風災では、最大瞬間風速20m/s以上が一つの目安とされることがあります。
また、火災保険には免責金額(自己負担額)が設定されている場合があり、契約内容によって条件が異なります。」
8-3. 申請の標準的な流れ

申請の流れは上記のとおりです。
各保険会社にご確認の上、申請を行なって下さい。
8-4. 火災保険申請の注意点(重要)
※国民生活センターには、火災保険申請サポートに関する相談が多数寄せられています。
「保険金で無料修理できる」
「必ず保険が下りる」
などと強く契約を迫るケースや、
保険適用外でも高額なキャンセル料を請求されるケースも報告されています。
火災保険の認定可否は、最終的に保険会社や損害保険鑑定人の判断によって決まります。
8-5. 火災保険でカバーされる「申請可能な追加費用」
火災保険では、修理費用だけでなく、契約内容や認定範囲によって以下の費用が含まれる場合があります。
・応急処置費用(雨漏り防止の養生など)
・撤去・片付け費用
・足場仮設費用
・廃材処分費用
・現地調査や見積関連費用
ただし、最終的な認定範囲は保険会社や損害保険鑑定人の判断によって異なります。
09.業者選びで失敗しないためのチェックリスト

悪質な業者が横行しているのでよく確認して依頼をする様にして下さい。
10.なぜ雨樋のDIYは推奨されないのか
雨樋の補修にDIYで取り組まれるお客様もいらっしゃいますが、専門業者からは以下の観点で推奨されない傾向にあります。
10-1. 高所作業の事故リスク
DIYでははしご・脚立の単独使用が一般的です。
統計では転落事故の半数以上が60〜70代に集中しており、毎年死亡事故も発生しているとされています。
10-2. 適切な勾配の確保が困難

雨樋は10mあたり3〜5cm程度の勾配を付けて施工することが理想とされ、これを誤ると詰まりやオーバーフローを招きます。水糸を張って金具位置を一個一個合わせる作業は、未経験者には難しいとされています。
10-3. 専用工具と接着剤の必要性

雨樋全体の接着には、メーカー推奨の専用接着剤(パナソニック雨どい接着剤など)が必要です。一般家庭の接着剤では十分な強度が出ません。
10-4. 廃番部材への対応
築20年以上の住宅では、当時の雨樋部材がすでに廃番になっているケースが多く、互換部材の選定には専門知識が必要です。
現在の雨樋が廃盤の場合、ほとんどのケースで雨樋の全交換になります。
例として、タニタの「レクター軒といR6号」系列は2025年9月末で廃盤となりましたが互換部材がないので全交換になってしまいます。
10-5. 保証の問題

DIYで修理した雨樋は、後日雨漏りやトラブルが発生しても保証対象外となります。
火災保険の申請でも、被害写真の撮影や見積書の整備が困難なため、保険金の認定が難しくなる可能性があります。
11.1都3県の地域別 雨樋事情

11-0. 4都県の年間降水量比較(平年値1991-2020、気象庁公式観測点)

11-1. 東京都
都市型水害とゲリラ豪雨
東京都内では、市街化の進行によって地下に雨水が浸透しにくくなり、短時間に河川へ集中流入する影響があるとともに、地球温暖化やヒートアイランド現象等の影響で時間雨量50mmを超える豪雨が頻発し、中小河川の氾濫による都市型水害が発生しています。2024年8月7日には、東京都練馬区で1時間に53.0ミリ(19:40まで)の非常に激しい雨を観測しました。
ヒートアイランド現象が雨樋に与える影響
東京では過去100年間で平均気温が3.3℃上昇しており、これは日本の平均気温上昇量1.5℃を大きく上回るとされています。
樹脂製雨樋にとっては、紫外線と熱による劣化が他県より早く進行する傾向があるとされており、合成樹脂耐候性向上型(アイアン系)の選択が有効と考えられます。
街路樹の多さ
東京都内ではケヤキ、サクラ、イチョウ、ハナミズキの街路樹密度が高い地域が多く、年に何度も落葉する大気汚染耐性樹種(ケヤキ等)が植えられています。
落葉樹近接住宅では年に2回(春と秋)の雨樋点検と清掃が推奨されます。
木造住宅密集地域
東京23区内には木造密集地域(木密地域)が広範に分布しており、環状7号線の内側にドーナツ状に広がっているとされています。
木密地域では隣家との距離が近く、雨樋の不具合があふれた水で隣家の外壁を汚す近隣トラブルに直結しやすい傾向があります。
23区別の助成・補助制度

11-2. 神奈川県
県土の地形特性
神奈川県は関東平野南西部に位置し、三浦半島を境として東縁を東京湾に、南縁を相模湾に接します。
県内は関東平野外縁にあたる山地が覆う県西部と、平野部にあたる県東部に大別され、地形区分は山地、丘陵地、台地、低地より成り立ちます。
県西の北部山岳地は丹沢山系で、県内最高峰の蛭ヶ岳(標高1,673m)などを含む1,500-1,600m級の大起伏山地が展開しています。
沿岸塩害の影響メカニズム
注文住宅で家を建てる際、屋外の金属部分には注意が必要です。
雨樋・縦樋は樹脂製のものが推奨され、板金部分はアルミかステンレス、それが無理でも少なくともガルバリウム鋼板を使うことが推奨されています。
学術的には、雨水の当たる部位は海岸からの距離に関係なく付着海塩量は一定ですが、軒下や軒裏部においては雨水による洗浄がないため、海岸に近いほど付着海塩量が多くなります。
壁面に樋などの突起物が存在すると、その下に付着した塩分が雨に洗い流されにくくなり、腐食が進行することが指摘されています。
急傾斜地・崖地
横浜市は丘陵地が多く、崖地が多い地勢です。
神奈川県では、急傾斜地崩壊危険区域として、斜面の角度が30度以上、高さが5m以上、斜面の崩壊により危害が生じるおそれがある家が5戸以上を指定基準としています。
雨樋施工において、崖地・谷戸地形では足場確保が難しい現場もあり、複数業者からの見積もりと現地調査が必須となります。

11-3.千葉県
令和元年房総半島台風(2019年)の教訓
令和元年房総半島台風(台風15号、アジア名Faxai)は、関東地方に上陸したものとしては観測史上最強クラスの勢力で、9月9日に上陸し、千葉県を中心に甚大な被害をもたらしました。
千葉市では、最大風速35.9m/s、最大瞬間風速57.5m(観測史上1位)を観測し、関東地方を中心に19地点で観測史上1位の最大風速や最大瞬間風速を観測した、記録的な暴風となりました。
住宅被害の規模
千葉県全体では、
住家被害は全壊391棟、
半壊・一部損壊76,483棟、
床上・床下浸水230棟で、
住家被害の約94%が一部破損(屋根・雨樋・サイディングなど外装系)を占めました。
千葉市単独でも、
全壊14件、
半壊245件、
一部破損6,367件、
合計6,633件の被害が発生し、1,302件の倒木も発生しました。
台風への備え
これまで大型台風の影響は西日本側で発生するケースが多かったため、九州・四国沿岸部では、古くから強風や塩害を意識した住宅設計が重視されてきました。
一方、関東地域では、近年まで「非常に強い台風」を前提とした住宅設備の考え方が、西日本沿岸部ほど一般化していなかった面もあるとされています。
特に2019年の台風15号では、千葉県を中心に屋根・雨樋・外装材の強風被害が多数発生し、関東圏でも耐風性能への関心が大きく高まりました。
房総半島の沿岸塩害
千葉県は房総半島全体が海に囲まれており、銚子、九十九里、御宿、勝浦、館山、南房総、富津、木更津など、沿岸住宅地が広範に存在しています。
そのため、地域によっては潮風による塩害の影響を考慮した雨樋選定が重要になる場合があります。
特に海岸近接エリアでは、
・高耐候型の合成樹脂雨樋
・ステンレス系
・耐食性を考慮した金属雨樋
などが検討されるケースがあります。
一方で、海からの距離や風向条件によって劣化環境は大きく異なるため、素材だけでなく固定金具や施工条件も含めて判断することが重要です。

11-4. 埼玉県
ゲリラ雷雨が発生しやすい地域
調査によると、2024年7月〜9月に埼玉県では111,274回の雷が観測され、全国最多となりました。
前年同期比では約4.1倍に増加しており、関東内陸部特有のゲリラ雷雨の多発傾向が見られました。
また、2024年8月7日には、埼玉県内で解析雨量1時間100mmを超える猛烈な雨となった地域もあり、記録的短時間大雨情報が相次いで発表されています。
大雪リスク(2014年2月の記録的豪雪)
2014年2月の記録的豪雪では、埼玉県熊谷市で最深積雪62cm、秩父で98cmを観測し、関東甲信地方を中心に観測史上1位を更新した地点も多数ありました。
熊谷・秩父では月降水量や降雪量も平年を大きく上回り、埼玉県内の農業被害額は229億円規模に達したとされています。
多雪区域の指定
建築基準法施行令や平成12年建設省告示では、垂直積雪量や積雪期間などを基準に、多雪区域の考え方が定められています。
埼玉県でも、秩父山間部など一部地域では積雪荷重を考慮した設計が必要になる場合があります。
積雪地域では、
・軒樋の取り付け位置を下げる
・出寸法を短めにする
・雪止めを設置する
・支持金具間隔を調整する
など、落雪荷重を考慮した施工方法が採用されるケースがあります。
また、海抜・風向・建物形状によって積雪条件は大きく異なるため、地域条件に応じた設計判断が重要です。

12.よくあるご質問(Q&A)


Q1.
雨樋の寿命はどれくらいですか?
A1.
素材によります。
塩ビは15~20年、
合成脂耐候性向上型は20~25年、
ガルバリウム鋼板は20~30年(メンテナンス次第で50年)、
銅は20〜30年、
ステンレス・アルミは30年以上が一般的な目安とされています。
新築から20年が経過した住宅では、点をご検討いただくのが安心です。
Q2.
雨樋の修理だけで足場を組む必要がありますか?
A2.
1階屋根の部分修理であれば、はしご・脚立で対応できる場合があります。
2階屋根の修理や交換になると足場の設置が必要となるのが一般的です。
屋根塗装や外壁塗装と同時に行えば、足場代を共有できるため経済的です。
Q3.
雨樋を自分で修理することはできますか?
A3.
高所作業の事故リスク、適切な勾配の確保の難しさ、専用工具・接着剤の必要性、廃番部材への対応の困難さなどから、専門業者への依頼が望ましいとされています。
労働安全衛生法では2m以上の高所作業に壁落防止措置を義務付けています。ご自身の家を直すとしても危険作業に変わりはありません。
Q4.
雨樋の色はどのように選べばいいですか?
A4.
屋根の色、外壁の色、住宅の景観、板の色との調和を考慮するのが一般的です。
パナソニックのシビルスケアPC50は6色、エスロンの超芯LEVOは5色など、各メーカーで複数のカラーバリエーションが用意されています。
Q5.
雨樋工事に助成金や補助金は使えますか?
A5.
雨樋単体での補助金は限定的ですが、屋根工事や省エネリフォーム、耐震リフォームの一環として工事を行う場合、お住まいの区市町村の制度を活用できる可能性があります。
練馬区の住宅修繕融資幹旋、豊島区の住宅修緒・リフォーム資金助成事業などが代表例です。
Q6.
工事中、近隣への挨拶は必要ですか?
A6.
足場を組む工事の場合、工事の音や粉塵、職人の出入りで近隣に影響が及びます。
工事前に施工業者と一緒に近隣挨拶を行うのが一般的とされています。
優良業者であれば、挨拶用の手土産や工事日程のお知らせ書面を準備してくれます。
Q7.
雨樋のメンテナンスは何年に1回が理想ですか?
A7.
落葉の近くに住宅がある場合は年に2回(春・秋)、それ以外でも年に1回の点検と掃が推奨されます。
また、台風や大雪、雷などの自然災害が発生した直後には、必ず点検することをお勧めします。
Q8.
雨樋から水があふれる原因は何ですか?
A8.
主な原因は、落ち葉・ゴミ・鳥の巣などによる詰まり、勾配不良、容量不足、堅・集水器の詰まりの4つです。
複合的な原因で発生することもあるため、専門業者の点検が望ましいとされています。
Q9.
訪問販売の業者を信用してもいいですか?
A9.
国民生活センターには訪問販売による屋根・雨樋工事の相談が多数寄せられています。
即日契約は避け、必ず複数業者から相見積もりを取り、特定商取引法第9条で定められた
8日間のクーリングオフを意識した冷静な判断が推奨されます。
まとめ

雨樋は住宅の寿命を左右する重要な部材で、放置すると外壁汚損、基礎沈下、雨漏り、近隣トラブルへとつながる可能性があります。お住まいの地域・気象条件・屋根材・ご予算で最適解が変わります。
ご自宅の地域特性や雨量、屋根の勾配や屋根面積を業者と一緒に考えて最適な雨樋をお決めになられるのが最良と考えます。
